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ジュール・ブロック 『ジプシー』 

ジプシー (文庫クセジュ)ジプシー (文庫クセジュ)
(1973/01)
ジュール・ブロック

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フランス語からの翻訳なんだけど少々読みにくい。
後半になるとあまり気にならなくなったけど,
序盤は翻訳の日本語をさらに頭の中でもう一度組み立てないと
なかなか意味がとれなくて苦労した。
たとえばこんな文章。

先史時代のヨーロッパがジプシーのおかげを大いに受けていたということについての、バタイヤールやその他の人びとの想像は問題にならない。というのは、ジプシーの言葉が徐々にそこから出てきたサンスクリット語自体が、歴史が始まってかなりたった時期のものであり・・・

「おかげを大いに受けていた」とか「想像は問題にならない」とか,
いかにもヨーロッパ言語からの直訳という感じがする。
文学ではなく学術書の翻訳だからというのもあるかもしれないけど,
この訳は大雑把に内容を把握するための第一段階で止まっていて,
ほんとうはそこからもう一段階,日本語を練る作業が必要だと思う。

「ジプシーの言葉が徐々にそこから出てきたサンスクリット語自体が・・・」
という文も直訳調。僕はフランス語は全然分からないけれど,
おそらく原文では,「サンスクリット語」という単語の後に,
それに係る関係文「ジプシーの言葉が・・・出てきた」が挿入されているのだと思う。
上の訳の「そこ」というのは「サンスクリット語」を指しているんだろうけど,
日本語として,「そこ」がそれより後ろの語を指すというのはちょっと変だ。
とはいえ僕も大学の授業やレポートで,同じような関係文をどう訳すかということで
しばしば悩んだ記憶があるので気持ちはよくわかる。
じゃあ上の訳し方以外にどんな訳があるかと訊かれてもわからないし。

翻訳を読んでいて,原文が気になることはよくあるけれど,
「この部分の原文はいったいどうなってるんだろう」と不思議に思って
考えてみてもさっぱりわからない場合は良い翻訳で,
上の文みたいに原文がなんとなく想像できてしまうのは
あまり良くない翻訳と言えるんじゃないかなあ。

それと,細かいことだけど,地名や人名の表記もちょっと気になった。
「セントピーターズバーグ」,「マリア・テレサ」,「プリニー」など,
たしかにそういう場合もあるかもしれないけど,
やはり「サンクトペテルブルク」,「マリア・テレジア」,「プリニウス」
というのが一般的なんじゃないだろうか。

というわけで,訳にばかり気が行ってしまって,
内容があまり頭に入らなかった・・・。
最初に目次を見たときに「音楽」という項目があったので
ジャンゴ・ラインハルトの名前が出てくるかと思ったんだけど結局出てこなかった。
ドイツにいたときに,ジプシージャズのギタリストの人と知り合いになって,
その人がよく演奏していたのがジャンゴ・ラインハルトだった。
彼がカフェなどで演奏をするのに何回か連れて行ってもらったことがある。
時間はだいたい晩。カフェやバーに出かけて行って
マスターに店内で演奏してもいいかと交渉して,OKが出たらそこで演奏をする。
で,僕や他の人は演奏が終わったら帽子などを持ってテーブルを回ってお金を集める。
お客さんがくれるお金は基本的にコインなんだけど,
時々10ユーロ札などを入れてくれる人もいた(酔っ払って上機嫌なおじさんとか)。
調子が良いと,別のお店に移動してまた交渉して演奏したり,
ある時は夜9時くらいにスタートして結局3軒はしごして
午前3時くらいまでやってたこともある(最後の午後2時過ぎに行ったお店は,
アナーキーな雰囲気の漂う,ちょっとヤバそうなお店だった)

その人は一度ジプシーの人たちのところで演奏をしたことがあるそうで,
その時になんと100ユーロ札を入れてくれた人がいたらしい。
ジプシー・ジャズを演奏してくれたのがうれしかったのかなあ。
彼らは一般的にあまり裕福ではなさそうだし,100ユーロはけっこうな大金だと思う。
お金への執着があまりないのかもしれない。
うれしいことがあった,じゃあ100ユーロあげてしまおう,みたいなノリだったのかも。
気前が良いというよりは,根本的に価値観が違うのかもしれない。

そういえば,僕の住んでいた町の端っこの方の山の中に,
もはや動かないキャンピングカーやテントがたくさん集まった場所があった。
一度友達と行ってみたことがある。その時は人には会わなかったけど,
かつては幌馬車だったようなテントの周りに手作りの柵がめぐらせてあったり,
歩いていてふと頭上を見上げたら木の上になぜか孔雀がいたり(↓写真),
何かと不思議な場所だった。

孔雀

その時は「ヒッピーみたいな人が暮らしてるんだろうか」と思ってたけど,
今思うとあそこはジプシーの人たちの居住地だったのかも。
今回のこの本を読んでいたらそんな気がしてきた。

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