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松村 栄子 『至高聖所(アバトーン)』 

至高聖所(アバトーン)至高聖所(アバトーン)
(1992/02)
松村 栄子

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本の整理をしていたときに見つけて
なんとなく読み始めたらそのまま最後まで読んでしまった。
芥川賞受賞作らしいけど,賞を獲ってそうな感じはしなかった。
つまり,さらさらとして読みやすいけど,突き抜けた部分はない。
もちろんそれは別に悪いことではない。
Amazonのレビューに「芥川賞という冠詞は忘れて読んだほうが
楽しめるかもしれません」と書いてる方がいたけど,まったく同感。
勝手な推測だけれど,作者自身も予想外だったんじゃないだろうか。

主人公が,ルームメイトの真穂の幸福とは言えない過去を聞いた後の文章

真穂が経験した悲しみの総量を思い浮かべてうっとりとした。それだけの悲しみがあったらどれだけの生き方が可能だろう。それだけ明快な問題があったら、解を得るのもたやすいことだろう。(78ページ)

10代の頃,似たようなことを時々考えていた。
みうらじゅんが「不幸なことに不幸がなかった」だったかな?
どこかでそんなことを書いていたけれど,それも同じこと。
明らかな不幸があるというのはある意味幸せだ。
「壁にぶつかった」というのは「挫折した」の言い換えではない。
ぶつかる壁があるというのも幸せなことだ。
地獄というのはきっと何もない真っ白な空間に違いない。
10代の頃はそんなことをよく考えてた。

主人公が通う大学のある町は,
名前こそ出てこないけれど,どこがモデルかは明らか。
その大学の環境は僕が通った大学とよく似ていて,
あの頃の閉塞感を思い出した。

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